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安全保障2026-04-29

防衛費

#安全保障#防衛政策#防衛費#予算

この記事でわかること

  • 防衛費GDP比2%目標の根拠と、2015年から2027年の推移
  • 43兆円(5年間)の財源内訳——増税・国債・剰余金の割合
  • 国際比較で見た日本の防衛費の位置づけ

この記事について

「防衛費をGDP比2%に増やす」という政策目標は何を意味するのか。増額の根拠・財源・使途・国際比較を防衛省・財務省の公式資料をもとに整理する。


1. 事実・データ

防衛費の推移

年度防衛関係費対GDP比(概算)
2015年度約4.98兆円約0.93%
2019年度約5.26兆円約0.96%
2022年度約5.40兆円約0.98%
2023年度約6.82兆円約1.24%
2024年度約7.95兆円約1.40%
2025年度約8.66兆円約1.55%
2027年度(目標)約10〜11兆円2.0%

出典:防衛省「防衛関係費の推移」/財務省「予算説明資料」各年度


GDP比2%の根拠

政府説明:「NATO加盟国が掲げる防衛費GDP比2%を念頭に、2027年度までに達成する」

根拠文書記載
国家防衛戦略(2022年12月)「2027年度において防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準がGDP比2%に達するよう、所要の措置を講ずる」

NATOの2%目標との違い:NATO加盟国の目標は加盟国間の「政治的コミットメント」(2014年ウェールズ合意)。日本はNATO非加盟だが、この水準を参照基準として採用した。


財源の内訳(2023〜2027年度の増額分)

増額幅:約43兆円(5年間合計)の確保方針

財源規模(概算)内容
歳出改革約3.0兆円国債費の節減、他省庁予算の活用
決算剰余金の活用約3.5兆円毎年度の余剰金
防衛力強化資金(国有財産売却等)約4.6兆円国有地・政府保有株の売却
税収増収分の活用経済成長による税収増
増税(防衛力強化のための税制措置)約1兆円法人税・所得税・たばこ税の段階的引き上げ

出典:財務省「防衛力強化のための財源確保について」(2022年12月)

増税の実施時期は「2024年以降の適切な時期」とされたが、2026年時点で具体的な実施年度の確定は政治的調整が続いている。


防衛費の主な使途(2025年度)

分野概算額主な内容
装備品取得・整備約3.9兆円艦艇・航空機・ミサイル等の購入
人件・糧食費約2.2兆円隊員給与・食費
維持整備費約1.5兆円装備品の維持・修理
施設整備費約0.5兆円基地・駐屯地の整備
研究開発費約0.5兆円次世代装備・技術開発

出典:防衛省「令和7年度防衛関係費の概要」


2. 構造の分析

国際比較

国防費(2024年、USD換算)GDP比
米国約8,860億ドル約3.4%
中国約2,250億ドル(公表値)約1.6%(実態は不透明)
英国約750億ドル約2.3%
ドイツ約900億ドル約2.1%
日本(2024年度)約530億ドル約1.4%
韓国約500億ドル約2.7%

出典:SIPRI Military Expenditure Database 2024

日本の絶対額は世界8〜9位圏。GDP比2%達成後は英独と同水準になる計算だが、中国・米国との絶対額の差は埋まらない。


防衛費増額が生み出す構造変化

防衛費増額
  ├── 装備品調達の増加
  │     └── 国内防衛産業への発注増(三菱重工・川崎重工等)
  ├── 人件費の増額
  │     └── 自衛官の処遇改善・採用拡大
  └── 研究開発費の増加
        └── 防衛装備庁(ATLA)を通じた技術開発

防衛費増額は単なる支出拡大ではなく、国内防衛産業の基盤強化・雇用創出という側面も持つ。これが防衛産業強化法(2023年)と一体の政策として設計されている。


増税をめぐる政治的構図

  • 自民党内でも増税に慎重な議員が多く、実施時期は先送りが続いている
  • 公明党・国民民主党は増税に慎重で、歳出改革・国債優先を主張
  • 野党(立憲・れいわ等)は防衛費増額そのものに反対

財源問題は「防衛費を増やすかどうか」とは別の政治的争点になっており、与党内での調整コストが高い状態が続いている。


3. 探求メモ

防衛費GDP比2%という数字は「NATOの目標」という文脈で語られるが、NATOの2%はあくまで政治的コミットメントであり、2%が科学的に算出された「適正水準」ではない。

より本質的な問いは「何のために何を買うのか」だ。予算の規模よりも、その使途が戦略的に整合しているかどうかの方が重要だという指摘は、防衛研究者の間では共通認識になっている。

財源について言えば、増税の実施時期が曖昧なまま支出だけが先行している現状は、将来世代への負担の先送りという問題をはらんでいる。この点は、防衛費の是非とは別に記録しておく価値がある。


まとめ

防衛費GDP比2%への増額は、装備・財源・使途の三つの問いをセットで見る必要がある。予算規模の数字だけが独り歩きしがちだが、「何に使うか」「誰がどう負担するか」の議論がより重要だ。財源の確定と増税の実施時期は、2026年時点でも未解決の政治課題として残っている。


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